野の鳥は野に
携帯電話がまだ世間に現われなかった時代の体験談です。
今日はどんな鳥に出会うかな。
双眼鏡をぶら下げて市民の森に入った。
高らかな「長兵衛・忠兵衛・長忠兵衛」の囀りに迎えられる。
音源を捜し当てた。
潅木の枝にぶら下げたウオークマンと、
枝のあちこちにくくり付けた鳥もち塗りの小枝を。
密猟だ!
あたりを見回すと薄暗い木陰からオッサンがのっそり出てきて、
「飼うてたメジロが逃げよってん」とふてくされた様子で言う。
その時胸ポケットで無線機の電子音が鳴った。
誰からやろ?と取り出したらオッサンの顔色が変わった。
「なんやっ 連絡するんけっ」と怒鳴った。
ちょっと怖くなって足早に離れ公園事務所に駆け込んだ。
ところが「それは警察の管轄で我々はなにもできない」とにべもない。
警察を呼ぶほどの熱意は欠如だが、
無為無策で密猟を見逃すのは残念やなあ。
遠くから双眼鏡でマンウォッチングをした。
アララッ籠をくくり付けた自転車とオッサンは消えていた。
場所を変えただけかも知れないが、
とりあえず電池切れの電子音がオッサンを追っ払った。
来年度から愛玩目的の野鳥の捕獲は原則不許可となるそうだが、
奥歯に物の挟まった感じでじれったい。
アメリカのリョコウバト(マーサ)・
日本のトキ(キン)の嘆きに耳を貸そう。
人間はどんどん増殖するのに、他の生物は減少、では地球に申し訳ない。