槐へのレクイエム
神社横の槐(エンジュ)が切られた。コゲラも私もお気に入りの樹だったのに…。
早晩こうなる予感はあったが残念でならない。盛夏・小道一杯散り敷いていた小花の絨毯は年々小さくなり、厳冬・寒風に揺れていた数珠状の実もめっきり少なくなっていた。
幹の洞穴は反対に大きくなり皮だけで辛うじて立っているように見えていた。
以前に楠を切っていた時は、辺一面芳香が漂い私は「あ、楠が泣いている」と思った。神社南を通る度に、切り口を撫でる。年輪は90を越えていた。樹皮の内側から滲み出た液はゼリーのようにプヨプヨと固まっている。槐の涙だ!
切り株の上に鳥のうんちが2粒。コゲラかシジュウカラがレクイエムを囀っていった跡だ。永年慣れ親しんだソングポストがスパッと無くなってがっかりしたことやろ。
でもこの槐はひこばえを残している。あと二三十年待っててや、ソングポストを作るから。
47号掲載(2001年5月)