森の賢者・フクロウ
丸顔で黒い目のフクロウは、人の顔に似ていて擬人化したくなる。
そのフクロウを間近に見たのは、70年前の小学生の時だった。
私は吹田で生まれ育ち、父はサラリーマン、近隣は農家、我が家の裏には溜池を挟んで小高い丘がある。丘の上の小さな祠に通じる石段は鬱蒼と茂った樹木に覆われて昼も薄暗い。夜には「ゴッホ ウォーウォー」「ぼろ着て奉公」と薄気味悪い鳴き声が聞こえている。気の弱い子供は近寄りたくない場所だ。 そこから帰ってきた腕白坊主が「レイコちゃん ええもん見せたろ」と 捕虫網から取り出したのはフクロウ!ポニョポニョと産毛の残っている若様!腕白は頭をつかんでぐいっと首を捻った。「あっ死ぬ」と叫んだ私の前には、静かに平然とした若様がいた。首が自在に回り、真後ろも見ることができるのをその時知った。
戦前の平民の子供達は玩具など買って貰わなくても、鳥・虫・草花で楽しく遊んでいたものだ。時には残酷なこともして。
次にフクロウに出会ったのは大阪城の市民の森。
高い枝の葉っぱ越しで、双眼鏡で辛うじて見る事ができた。
大都会のど真ん中の公園にフクロウがいるなんてと、鳥好き人間が集まってわいわい、がやがやとカメラを向けたり、ペリット探しをしたりした。
夜のネズミ狩りに備えて休息中のフクロウは、さぞ迷惑な事だったろう。
あれはもう平成になっていた頃の話かなあ。
三回目のフクロウは10月23日(土)24日(日)にイトウギャラリーで、遠山忠司さんの写真展で面会する。フクロウと、久しぶりに逢う鳥好き仲間たちとの鳥談義が楽しみやなあ。