葛=クズ?
バッバーンと鳥見人や野鳥を再三驚かせていた射撃場が数年前に移転した。跡地にはビオトープを作って、人や犬猫を入れないでと願っていた。人手の入らない荒地は葛原になってしまった。
葛と聞けば秋の七草・葛湯、葛餅と風情あるイメージを持つが、眼前のクズは逞しい生命力で地表を覆い尽くしている。
新芽は蛇が鎌首をもたげるようにすさまじく伸び、桐、夾竹桃に絡みついている。木々は気息奄々。メタセコイアや石垣にまで這い登って止まる所を知らないクズ。
花咲ばあさんの播いたナンテンは土に還ってクズの肥料になってしまったか‥
風にざわめく葛原の上を蝉声にけおされ無口になったヒヨやツバメが飛び交っている。
バードバスや潅木の茂みがあったら色々な野鳥が立寄って、ちょっとしたサンクチュアリになるのに‥‥・ 何もしないで嘆いてばかりの私はクズの強力なエネルギーに圧倒されて炎暑の中を呆然と立ち尽くした。
54号掲載(2002年8月)