カンムリカイツブリおまえは。
初めての出会いは忘れない。たくさんの出会いがあった。振り返れば遠い昔の出会いも。たくさんの出会いがあった。だから悲しいけど忘れていく。
「人は忘れないと生きられない。
人は出会いがないと生きられない」
カンムリカイツブリ。今日も西外堀に。日課のように朝の出会い。あいさつをしてその日が始まる。
毎朝出会うのはカンムリカイツブリ。でも出会うのは心。
出会うために生きている。
おはよう。今日も堀の水面から私を見上げた。私も心で見つめた。
それがあいさつ。
カンムリカイツブリに初めて会ったのは、どこだったか。古い昔の記憶。
きっと感動してた・・・。
斐伊川だったか、夢前川だったか、矢作川だったか。記憶にない。遠い昔の思い出がたくさんあり過ぎて。
「思い出は多い方がいい。少ない方がいい」
「悲しい経験は多い方がいい。それとも少ない方がいい」
「嬉しい経験は多い方がいい。少ない方がいい」
でも今は思い出せない。あまりに多くの出会いがあって、普通の鳥になってしまった。おまえが、でなく私の心で。おまえのために思いっきりたくさん、後悔しないほどたくさん。喜ばせてやりたい。今の日々、老いた自分が後悔しないために。
このカンムリカイツブリとの出会いのために。
カンムリカイツブリの夢はとことん応援してやる。
清らかな矛盾のために。同じ夢を抱いて眠っているんだから。