アオバズク探検隊
アオバズクを抱いたことがある。市内の国道脇の植え込みの中にうずくまっていたと、近くの人から預かったものだ。カラスに攻撃されていたとの話しだった。
小さな穴が無数に開けられた紙箱を少し開けて中をのぞくと、薄暗い中に赤っぽく丸い目が見えた。逃げ出しそうで急いで閉める。
小さいのでフクロウの子どもと言ったのだろう。一瞬しか見ていないが、オオコノハズクかもしれないと思った 。
部屋でふたを開けると飛び出したのはアオバズクだった。窓際に積んだ本にとまった姿は双眼鏡で見るのと違ってずいぶん小さく見えた。
幸いカラスに追われたショックだけだったのだろう。飛ぶことは問題なさそうだ。
軍手で後ろから抱くと、瞬間に首を回して噛み付いた。
夜遅く箕面山中へ出かけ箱のふたを開いて差し出した。箱の縁にとまったアオバズクは、首を回して辺りを見回した。しばらく私を見つめた後静かに夜空へ舞った。
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夏鳥たちの厳しい現実はアオバズクも例外ではない。繁殖には樹齢数百年以上の巨木が必要になる。しかし人の影響で樹勢が衰え、風雨で折れたり、樹洞が崩れたりして営巣可能木は減少する一方。
少しずつ府内のアオバズクを調査している。この夏も十数か所を探し回ったが、いつもクス、イチョウ、ケヤキなどの巨木を前に言葉を失う。
例えば野間の大ケヤキ。幹周り約14メートル、高さ30メートル、張り出した枝は辺りの空間を圧倒する。ケヤキとしては大阪府1番、全国で4番の巨木。
樹齢約千年とある。菅原道真、土佐日記の紀貫之、源氏と平氏。平安時代にこの木はすでに生きていた。そしていまも生きている。人のいかに小さなことか。鳥を忘れて巨木に見とれてしまう。
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大阪城公園で渡りの時期に見られるアオバズクは減少傾向だ。今年の春は見られなかった。
1992年から1995年には毎年観察記録があるが、その後は数年に一度程度しか観察されていない。
各地を見て回ると大阪城公園でも繁殖できないだろうかと夢をみる。洞ができるほどの大木はないが巣箱はどうだろうか。問題は人とカラスだろうが。
アオバズクが繁殖する大都市。豊かな暮らしとはなんだろう。噛まれた指の痛みを思い出す。
64号掲載(2004年8月)