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タイトル53 自己紹介へ

雷シギ神社東に降り立つ

組織や集団の中での生活を長く続けると、個を無くし、組織のルールでのみ判断する事に疑問を感じなくなる。一方、野鳥にこだわると世界が見える。
この春に定年を数年残して退職した。希望退職の募集があったわけでもない。
自らトリミニスト(鳥見人)としての道を選択したわけだ。
ある意味で辛い方の道を選んだといえるが、心中からの声に素直に答えようと思った。

□   □   □ 

電話をもらったのは昼前だった。「神社東側にジシギが出てる」と。ヤマシギではと確認するも、ジシギだとの返事。
ジシギなら何れにしろ大阪城公園初記録だ。これは!と心がはやるが、出かけなければならない用事があった。
その上豊国神社東側の環境と、バーダーやカメラマンが多い時期で、今から駆けつけてもダメだろう。「さっきまで居たのに」と言われ、悔しさを隠すのが落ち、との思いもあった。
葛藤のすえ、所用のため出かけた。車を走らせながら「どうせもう抜けていないから」、「行っても無駄だったから」と慰め続ける。
戻ってきた時は既に2時間経過していた。いないと分かっているが念のためと電話すると、まだ居ると。有難い。
神社の塀沿いの深い草むらの中を採餌しながら歩いたり、うずくまって休んでいる。
草の間に見え隠れする。驚くとその場で固まったように動かなくなる。
かろうじて上面が見られるところで採餌することもあった。尾羽を開いた瞬間もあった。取りあえずシャッターを押した。 翌朝メールが入った。昨日のジシギはオオジシギとのこと。
毎回初めての種が観察される度に思うが想像を超える。
身体が熱くなる。トリミニストでなければ、あるいは大阪城公園をテーマにしていなければこの思いは分からない。

□   □   □

これからは人生の新しい型を作り出すことだ。心と環境の視点で見直すべきだと思う。
今、鳥を見ていると高水準な生活をしていると感じ、トリミニストになったことを大変幸福に思っている。

53号掲載(2002年5月)

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