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タイトル59 自己紹介へ

剣術ツバメ返し

ツバメとスズメの兄弟がいました。あるとき、親の危篤の知らせに、スズメはなりふりかまわず駆けつけました。一方ツバメはゆっくり紅をつけていたため遅れてしまって、死に目に間に合いませんでした。
神様はスズメは感心者だから米を食べなさい。ツバメは親不孝者だから虫だけを食べなさいと命じました。
そのためツバメは「虫食って・土食って・口しぶーい」と鳴くようになったそうです。

□   □   □

大阪城公園の記録の一環として写真も撮っているが、ツバメの撮影は難しい。駅から帰途のケーキ屋の日除けや、マンションの入口など、撮影場所は幾らもあるのだが、大阪城公園で撮影するのがこだわり。
撮れない理由は、飛び回っているからだ。数年に一度くらいは、とまった姿に出会うこともある。休息か、あるいは給餌を受けやすいようにとまっているのだろうか、いつも幼鳥。
しかも急いでカメラを取りに走るがいつも手遅れだった。
たかがツバメの写真と思われるだろうが、大阪城公園にこだわる私にはどうしても必要な写真だ。短いレンズで青空と雲と一緒に点景として取り込む方法や人工川の辺りに泥と藁を用意して来るのを待つ方法などいろいろと思考した。
数年前に人工川で飛び交う2羽を見つけた。右へ左へ規則正しい飛行コースを見て撮影できるかも知れないと半日挑戦した。しかし70枚ほど撮影したがすべて失敗。かろうじて画面の端に映っている1枚を大阪城公園のツバメとして残したが、出来は30点。飛翔中を撮るのは非常に難しい。
そして昨年、ついに西の丸庭園の芝生の上に立つ幼鳥の撮影に成功した。70点の出来ではあるが一応の満足。この写真に十年以上もかかった。
今年は空堀沿いにとまる幼鳥を見つけて撮影すると、続いて修道館西側でも枝にとまる幼鳥に会う。不思議なことに長い間会えなかったツバメに次々と出会う。
当然撮影したがやはり70点の出来。後の30点は額と喉が紅色の成鳥の撮影だが何年先になるだろうか。

□   □   □

先日、山口の錦帯橋の傍らの旅館に勤める知人から手紙がきた。近くを通ったのに寄ってくれなかったと怒っている。春に牛島へカラスバトを見に出かけた時の事だ。
錦帯橋は錦川の畔で佐々木小次郎が柳を斬り、ツバメを斬って「ツバメ返し」の剣術の鍛錬に励んだ所である。
成鳥の写真は飛翔中を撮るしかないようだが自信がない。やはり小次郎は剣豪だ。

59号掲載(2003年7月)

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