ゆれる。
草むらを指さして、鳥友がいう。
「あそこに変なんがいる。少し長い草のところ」
梅林は、40センチくらいの草が伸び放題。
しばらくその辺りを凝視していると草がゆれた。茎の中ほどの隙間にわずかに鳥らしきものが見える。
んー。鳥だろうが、顔もよく見えない。目も見えない。
それから二人は、「ウグイスじゃないか。コルリかな。ヨシキリみたい。いやノゴマの♀・・・」などと思いついた名前を次々と口にする。
しばらくして、隙間に見えていた鳥が少し上の方に出てきた。あー顔が見える。「よしっ今だ」カメラを向ける。心臓の鼓動が聞こえる。
その時、突然、別の鳥が飛びだして横の枝にとまる。
「2羽いたんだ」
夢中でシャッターを押す。鼓動が一段と激しくなる。
数日たった朝。いつものように市民の森からもみじ園に入って、右回りに歩く。ふと視線の端に入った斜面の草がゆれる。
いつもなら間違いなくそのまま通り過ぎただろう。その程度のこと。風にゆれる草。
でもその日は違った。立ち止まって振り向いてその辺りを凝視。草がゆれる。
しばらく待ったが何も出てこない。そのまま後にするのも心残り。その草むらに近づいてしばし中を覗き込む。
突然、小さな鳥が飛びだした。5メートルほど先の草むらに飛び込む。「チッ」と小さな声を残して。
「あー。やはりいたんだ」
瞬時目に入っただけ。褐色系の羽色が朝日に反射した。スズメより小さい。
ゆれる草を目にすると「ひょっとして」 心がゆれる。