夏のひととき。コアジサシ
初めてコアジサシを見たのはずいぶん昔になる。詳細は覚えていないが、場所は浜甲子園だった。
現在のように整備される前で、堤防に取り付けられた鉄はしごを上って、浜に下り、座り込んで海上を飛ぶコアジサシを見ていた。
白くてシンプルで小さくてスマート。ホバリングすると一気に海面に落ちる。一人で眺めている。
観察しているというより、ぼんやりと時間を過ごすひと時。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
先月、東外堀で4羽のコアジサシに出合った。大阪城公園で4羽が一緒に見られたのは初めてだ。1羽がギィギィギィと鋭い声を出して追いかけている。幼鳥が親に餌をねだっているのだろうか。
頭に浮かんだのが当時の自分。あれから長い歳月が過ぎた。仕事も私生活も予想しなかった出来事に次々と直面しながら。
コアジサシは、東外堀を北から南へ、南から北へ大きく飛び回り、時々水面に飛び込む。カメラを向けるが、なかなか上手くレンズにとらえられない。1時間も繰り返していると、コアジサシと私だけの世界に入ってしまう。
人生ってなんだろうね。いろいろな事があって、ひとつひとつ思い出せなくて。それでも何かあった。
コアジサシいいねー。ただただ一生懸命に魚を捕っている。私も、つかみたいものがいっぱいあって、それに向かって生きてきた。
釣り人が静かに水面を見つめているように、鳥を見ながら自分の人生をみつめている。
コアジサシっていいねー。白くてシンプルで小さくてスマートで。