大阪城で愛を育む。
西の丸庭園の開園とともに門をくぐり、手をつないで奥へ向かう一組のカップル。北端の封鎖された門の辺り。ここなら少し人目を避けられる。二人は目を見つめ合う。初めての「くちづけ」
甘いひと時。その瞬間、彼は駆け出した。「ヨタカやー!」
夢の中に入り込んでいた彼女は、いきなり現実の世界に投げ込まれた思い。ヨタカを追いかける彼の後姿に目をやり苦笑。
「私と鳥とどっちが大切?」でもそんな彼が好きと。
よりもよって、人生の重要な場面にヨタカが出なくてもいいのにと思う。
またある時は、ツバメのねぐら入りを見せようと、夏風邪をおして案内。彼女はものすごい数のツバメが頭上を飛んでいる姿に大感動。そんな中、大型の鳥を目にした彼は「あれはハヤブサやでー」と彼女そっちのけで走って行く。
あーあ。どちらを優先するか? 時と場合を考えんかい。と言いたいが、二人はこうして愛を育んだ。
近い将来愛を結実させるだろう。その時は、バードウォッチングでデートを重ねた二人のこと。新婚旅行先は、緑の自然豊かな林の中にある、質素で温かみのある宿がいい。ありきたりの豪華ホテルはお勧めしない。
ただひとつ心配がある。新婚旅行先で初めての夜。愛を語り合い心は一つになる。そしてベッド中へ。愛を確かめあうその時、窓の外から「キョキョキョキョキョ」彼が一瞬我に返って「ヨタカやー!」
まさか裸でベッドから飛び出すとは思わないが。