やっぱり本物を見ないと。
「元山さん。今日は大阪城公園と違うんですか?」と声をかけられる。
話題のノハラツグミの観察に出かけた時のことである。大阪城以外で私を見かけると違和感があるようだ。「ええ…そうです…」と気弱な返事。何となく場違いな所に来てしまったような。
十数年前までは珍鳥情報で全国を駆け巡っていたのだが、最近は旅先で鳥と酒と肴をのんびり楽しむ鳥見行が気に入っている。
ノハラツグミは近距離で見ることができた。前夜予習したとおりの識別ポイントが確認できて悩むことはない。
やはり実物を目にすることが一番。いくら図鑑の写真を眺めても、大きさ、色柄、歩き方、飛び方、鳴き声、採餌の仕方など等…、その鳥のもつ雰囲気を感じることはできない。
1995年の春に市民の森でウタツグミが出た。警戒心が強く見つけても瞬時に飛び立ち観察できない。かなり粘ってそれらしき奴を見かけてシャッターを押したが結果はクロツグミ♀しか写っていなかった。
識別に喧々諤々の意見が出た。かろうじて撮影された知人の写真を眺めて悩んだ。ウタツグミは見たことがない。図鑑にも詳しく載っていない。
たまたまオランダから来ていたバーダーの「トム」に写真を見せた。ヨーロッパでは日本のムクドリやヒヨドリのようなもの。一目で答えを出してくれると期待したら「トム」は写真を手にしてうつむいた。
ウタツグミは数種の亜種があり、最も極東側の亜種ではないかとの意見もあったが答えのないままに終わった。語学ができれば外国から書籍を取りよせて調べることもできただろが。自分で結論を出せないのが情けない。
ノハラツグミの情報を手にした時、最初に頭に浮かんだのはこのウタツグミだった。今後大阪城公園に珍しい大型ツグミが出た時の勉強のために。そんな思いもあって出かけてきた。やはり大阪城公園から離れられない。