パラダイス 〜優しい目で〜
桜色の風がカーテンを揺らし鳥たちの歌声を運んでくる。カーテンの隙間からそっと外を覗く、ありったけの声を張り上げ様々なメロディーを奏でる鳥たちの姿。そう、ここは鳥たちのパラダイス。
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大阪城公園を包み込んだ桜もピークを過ぎ夏鳥の飛来を待つばかり。毎年この時期は期待に胸を膨らませ心新たに鳥見をと初心に返る。
鳥見を始めた頃は図鑑を眺めながら色鮮やかな鳥たちとの出会いを夢見、心を踊らせ探鳥地に出向いていた。識別も聞き分けの知識もないまま囀りを追いかけ山道を歩く、その声に導かれるまま獣道に足を踏み入れたことも。
しかし、その姿を見ることは出来ず悔しい思いが残るばかり、むやみに歩いていても彼たちは姿を見せてはくれないと思い知る。
数年前からカメラを持ち歩き、記録にと出会う鳥たちを撮影、出来るだけ近くで鮮明にと一歩また一歩その距離を詰める。しまった・・・
そんな時、鳥見の心得を教えてくださった先輩バーダー方の言葉が頭に浮かぶ。「探鳥地は野鳥の生活の場、『お邪魔します。ちょっとだけ覗かせてくださいね。』と言う気持ちで」、「野鳥は常に外敵から身を守るため隠れながら生活している。出会えなくて当たり前、出会えばラッキーという位の気持ちで接しなさい」と。
知識は後で付いてくる、まずは鳥たちの立場に立って鳥見をしなくては。そんな事を気付かされた。
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都会のオアシス”として名高い大阪城公園。ここには幾種もの野鳥が訪れ、ここで多くの野鳥が生活している、私たちはそこに『お邪魔』しているのだ。
大阪城公園は鳥見人のパラダイスである前に、鳥たちのパラダイスでなければ。
長い旅に発つ冬鳥たち、一年で最も大切な時期を前に英気を養うためこの地を訪れる夏鳥たち、そんな鳥たちを優しく見守ってあげたい。
カーテンの隙間から、そーっと。