夕暮れ時
夏休みも残すところ一週間、大阪城公園では蝉の声も徐々に小さくなり、 コオロギの声がかすかに耳に飛び込んでくる。
盆前には力強く涌き上がっていた入道雲も影を潜め細長い涼し気な雲が秋を運んでくる。
猛暑での観察中、木陰で涼をとりながら何気なく空を眺めていると、季節の移ろいを感じると共になぜか子供の頃を思い出す。
まだ開発のあまり進んでいなかった昭和40年代、実家は大阪府下ではあるが最寄りの駅からは約2キロ離れた片田舎、周りは田んぼに囲まれ子供の足で20分も歩けば小高い山。そこには溜め池やちょっとした原っぱがあった。夏休みといえば“水遊び”と相場が決まっていた、午前中は近くの田んぼや川で友人と蛙つりやザリガニ取り、昼まで泥まみれで遊び、昼ご飯後の待ち合わせ場所と時間を確認して一時帰宅、泥だらけの帰宅は当然お袋のカミナリ。そんな事はお構いなし、ご飯を腹に詰め込み昼からの水遊びに出発進行!
腹ごなしに溜め池までぶらぶら歩く、午後は暑いので池で大暴れ、水深は数メートル、池の底にある物を潜っては拾いその数を友人と競ったりして遊んでいた。
ある日、水面から顔を出すと警官とその横にしょぼくれた友人が立っていた。それもそのはず、その池はもちろん遊泳禁止。
「もう二度としないな、男と男の約束やぞ」と警官に指切りをさせられた。その後池での水遊びが出来なくなった我々は山遊びに切り替えた。今まで行った事のない山まで足を延ばし探検気分で未知の世界を歩き回る、とその時一人が足を滑らせ数メートル落下、運良くそこには深い川があり流れも緩やかで怪我をすることなく着水、助け出そうと全員順番に飛び込む、言うまでもなく翌日からその川が午後の遊び場所となる。
ありったけの元気を使い一日中跳んだり跳ねたり・・・気が付けばいつも夕陽が空を真っ赤に染めていた。晩ご飯を楽しみに最後の力を振り絞って駆け足で家に帰る。頭上では「今からが俺たちの時間だ」と言わんばかりにコウモリが元気よく飛び回っていた。
今は大阪城公園で野鳥や蝶に遊んでもらっているが午前中だけ、よく考えてみると今まで夕暮れ時に足を踏み入れた事がない。先日“城灯りの景”に出向いたがその時が初めてだ。その日は空が真っ赤に染まり当時の遊び帰りを思い出した、ここにコウモリが現れたら・・・と思った矢先に空堀で「今からが俺たちの時間だ」とコウモリが元気よく飛び回っていた。
まさか大阪城公園にコウモリがいたとは“ディスカバリー(発見)”
私の知らない夜の大阪城公園は未知の世界、夜行性の生き物の世界が広がってると思うと当時の探検心が沸々と蘇ってくる。