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73回タイトル

メジロに導かれて(アカホシテントウ)

発端はこの写真。

2013年2月23日、城南地区のソメイヨシノで採餌するメジロ。撮った写真を整理している時、これが目に留まった。嘴の先数cmの所に、黒地に赤い紋を持つ虫らしき姿。ピントが合っていないので分かりづらいが、テントウムシの仲間に見える。
そして3月2日に、村上(♀)が梅林で見つけた異様な物体。前回の末尾に載せた写真がそうである。初めて目にしたが、アカホシテントウの蛹殻であろうと察した。図鑑の記憶があった。この日、ピースおおさか近くでヒレンジャクを観て大満足だった村上(♀)。対して私を最も興奮させたのは、アカホシテントウの交尾に遭遇できたことだった。

当時、タマカタカイガラムシの観察を始めていたが、アカホシテントウが天敵であることを知り、それならばと両者を並行観察することにした。

まずはアカホシテントウの概略から。
〔分布〕 北海道から九州の平地及び山地。国外では極東地域及びオーストラリア。
〔形態〕 背面は黒色で赤紋を1対持つ。透明感のある赤色でルビー様の光沢がある。
翅鞘は縁が反りドイツ軍のヘルメット状。大きさは6〜7mm。ナナホシテントウと粗同等。♀は♂よりやや大型であるが、個体差があるので外見上分かりにくい。
〔生態〕 樹上性、年1回の発生。成虫は5月頃に出現。コナラ、クリ等のブナ科及び、バラ科サクラ属につくカイガラムシを補食。

まず手始めに、この虫の卵を探すことを試みた。交尾していた梅の木を重点的に、幹や枝を調べてみた。見つからなかった。
ナナホシテントウの様に卵塊をつくり枝上に産み付けるものと思い込んでいた。タマカタカイガラムシの殻の中に隠すように産卵するのを知ったのは、随分後になってからだった。変化に気付いたのは、3月23日。花の綻びた梅の幹に幼虫を見つけた

体長3〜5mm。周囲には1mm程度のタマカタカイガラムシが付いている。白っぽい方が♂2齢幼虫及び蛹、褐色の方は♀2齢幼虫である。アカホシテントウがこの虫をムシャムシャ食べてくれる。
近くに脱皮痕があったことから、大きい幼虫は2齢にはなっていると思われる。6列の棘をまとって怪獣のような虫が、見た目とは裏腹に梅にとっては益虫である。

幼虫は集団をつくったまま少しずつ大きくなって行く。ナナホシテントウと同じであれば、幼虫期は4齢までなので、3枚目の写真は幼虫の最終ステージであろう。体長は1cmになっている。
4月下旬はタマカタカイガラムシの交尾の時期である。♂は羽化し、♀は外殻を形成し産卵に備える。カイガラムシの活動がピークを迎える。これに符合する様にアカホシテントウの幼虫も成長をして行く。全く上手くできている。
そして5月3日の梅林。蛹化を確認した。

幼虫の背面が縦に避け、光沢のある黒色の物体が覗いている。それが蛹の本体、幼虫期の鎧の中で蛹化するのもこの虫の特徴である。
5月18日、羽化が始まっていた。抜け出した蛹殻に掴まって、羽が乾くのを待っている。頭部及び胸部、脚は既に黒化している。翅鞘の何とも美しい色。できたてのプリンを連想してしまうのは私だけだろうか。周りの蛹の中には黄色味を帯びたものが見られたが、羽化の近いことを窺わせていた。

梅の葉裏には既に羽化した個体も見られた。羽が乾くと葉裏に移動して休むらしい。
5月25日には多くの成虫が観察出来た。全て梅の葉裏で休んでいる。動いている個体は見当たらなかった。昨年の梅林での羽化は5月20日前後がピークだったのだろう。
一方、音楽堂西側のソメイヨシノで発生していたアカホシテントウの成長は遅れていた(タマカタカイガラムシの成長も梅林のそれと比べ遅れていた)。5月18日には未だ終齢幼虫であった。

写真はタマカタカイガラムシ(♀成虫)に襲いかかる終齢幼虫である。カイガラムシの殻に丸い穴を開けて、中身を食べる。
蛹化が確認出来たのは、梅林での羽化が終わった5月25日、成虫が見られたのは6月8日。約2週間の遅れになる。これが何に因るものか分からないが、同じ公園内でも発生時期にズレがあるのは面白い。
その後、ソメイヨシノの葉裏で休む個体が何度か見られたが、6月29日を最後に観察できていない。

尤も、暑くなって大阪城公園から足が遠のいたのが原因なのだが。
アカホシテントウは羽化後夏眠に入るという。樹木の葉裏で単独、或いは集団で休んでいるらしい。活動は秋も深まってからという報告もある。そして12月から早春にかけて交尾し、産卵するというサイクルをとる。
昨年の観察では、成虫の採餌する姿に遭遇していない。早春に観たのは梅や桜の枝先で、新成虫は葉裏で、何れも静止しているものだった。また、夏以降の様子についても気に掛かったままである。

梅林では、このテントウムシの新たな命が活動を始めているだろう。今年もこの虫のことを少し気にしながら、探鳥を楽しんでみようと思う。

 

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