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73回タイトル

『 検 証 』

お久しぶりです。
「大阪城公園鳥だより」紙面版時に何度か掲載して頂いたのですが、個人的な事情で鳥見をやめてしまいプッツリ途絶えたままにしていました。
スタッフの皆様にはご心配、ご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありませんでした。この場をお借りしましてお詫び申し上げます。

あれから5年、昨年の4月に大阪城公園に足を運び鳥見を再開、久し振りに見るオオルリがなんと新鮮なことか。「やっぱり鳥見はいいなぁ」と実感しました。
あの頃はケイタイすら持っていなかった私がコンデジで武装(私にとっては文明開化)。おまけにもう一人の村上(♀)と共に四つの瞳で探鳥です。

さて今回は、ゴマダラチョウとムラサキシジミについてです。
以前このコーナーで取り上げた蝶ですが何点かカメラに納めることが出来たので以前の話の『検証』てな所です。

【その1】 ゴマダラチョウの幼虫

この蝶は4齢幼虫(羽化した幼虫が1齢、そこから3回脱皮したのが4齢幼虫)で越冬することが知られてます。11月頃には食樹植物であるエノキの根元に積もった落ち葉の中で越冬します。2012年11月23日城南地区にあるエノキをチョットだけ覗いてみると・・・
ゴマダラチョウの幼虫エノキの葉の裏に張り付いた幼虫が矢張り見つかりました。まだ完全に保護色になりきっていない少し黄色味を帯びた個体です。背面にある3対の突起(オオムラサキ・アカボシゴマダラは4対)と尾端がV字状に開く(アカボシゴマダラは閉じぎみ)のが特徴です。頭部には2本の角状突起があり、バイキンマン喩える方もいます。写真では前方に突き出していますが、これは伏せて休眠しているからです、本来は上向きに立っています。
鳥が寝る時に首を曲げて頭部を羽毛に隠す様にするのに似てますよね。
エノキ幼虫を見つけたエノキの様子です。黄葉して落葉し始めた頃です。
12月9日にはもう少し調べてみました。城南地区で9頭。
愛の森で4頭。
他に山里丸でも見つかりました。
ネット検索すると「樹の北側で越冬する」と書かれていたりしますが、私自身はそう感じた事はありません。方角よりも風で飛ばされない安定した落葉がある事が第一で、下草の状態や周りに植栽されている低木の有無で幼虫の見つかるポイントは変わってくると思っています。慣れてしまえばこの樹にはいるとか、この樹だったら彼処(あそこ)が臭いとか分かってくるものです。但し、同じニレ科のケヤキ・ムクノキとエノキを識別しなければなりませんが。
ゴマダラチョウ
ゴマダラチョウ写真の幼虫は褐色ですがこれは越冬期だけのもので他の季節では黄緑色をしています。いわゆる青虫です。羽化する迄、繁った葉の中で過ごすからでしょう。
越冬幼虫は体色を緑から褐色に変えて樹皮と同色になってから樹を降ります。飼育下での観察では徐徐に変わるのではなく、変化の兆しが現れると一日で褐色になってしまうとの事です。そして春には褐色のまま樹上に戻りエノキの新芽を食べて脱皮をすると、緑色に変身して樹上で保護色になるのです。
成虫になって頭上を飛び始めるのは5月の中旬あたりでしょう。

【その2】 ムラサキシジミ

ムラサキシジミ大阪城公園に再び通う様になってこの蝶が意外に多い事に気付かされています。早春の越冬個体から6月の第1化、8月の第2化、10月の第3化(越冬個体)と観察出来るピークは有るものの、年間を通してみることの出来る蝶です。
名前の由来となっている翅表の金青色を隠したまま翅を閉じて留(と)まる事が多い上に、明るい開けた場所で飛ぶ蝶でない事から気付かずじまいの方も多いのではないのでしょうか。とは言え本丸庭園や飛騨の森、市民の森、緑のリズムで観察でき、特に音楽堂西側通路と楓園周辺では度々出会いがありました。
写真は6月11日午前10:40。音楽堂西側通路で撮った♀です。翅を閉じていると地味ですが(どちらかと言えば蛾のイメージでしょ)、翅を開いた姿は和名の通り美しいものです。9月1日には産卵も観察出来ました。
ムラサキシジミの産卵 アラカシの新芽に産卵です。虫嫌いの村上(♀)が見つけてくれました(感謝)。
生まれてくる幼虫の為に何処に産卵すれば良いのか、母蝶にその情報が遺伝的に備わっているのは何とも不思議なものです。この個体は2個の卵を産み付けていますが、通常1回の産卵で1個から数個のようです。
翌週、卵上部中央には孔が空き羽化した後でした。その後も観察を続けようとした矢先、次の週に訪れてみるとその枝はバッサリ伐採、落胆です。この公園ではガッカリさせられる事が多いようです。
そんな中、見つけました。以前このコーナーの第3回「小さい宝石みーつけた。」で、この蝶の幼虫は蟻を集めて外敵から保護してもらう、好蟻性昆虫である旨のことを書きましたが、アラカシに蟻の集団がいたのです。ムラサキシジミの終齢(4齢)幼虫です。
ほぼ食べ尽くした葉の裏側にへばり付いています。頭部が葉柄側に向かっているので写真ではお尻が見えています。周りの葉には食痕が見られます。
シリアゲアリ 角度を変えてみると体長18㎜の幼虫に12匹の蟻が集まっているのが分かります。詳しくないので断定は出来ませんが、シリアゲアリ属かと思います。
背中の蜜腺から分泌液を出すことで蟻を寄せ、それによって天敵であるクモ類や寄生蜂狩り蜂類、サシガメ類、ダニ類から身を守ろうとしていると言われています。翌週には幼虫の姿は有りませんでした。蟻たちも姿を消しています。場所を移して蛹化したのでしょう。

今回の検証は此処までです。次回からは蝶に限らず公園内の小さなnatureの観察報告もしてみたいと考えています。

最後に、ムラサキシジミの近縁種にムラサキツバメという蝶がいます。私はこの公園で未だ御目に掛かっていませんが、ひでキング!からは神社東側で産卵行動を観察したと聞いています。最近、一番櫓地区に不穏な動きが有るやに聞いています。彼処(あそこ)のマテバシイの林が、今のままであることを願ってやみません。

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