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73回タイトル

旅鳥シマノジコ現れる

2月25日昼過ぎ勤先に自宅から電話が入った。我家では家族の生死にかかわるような緊急かつ重大でなければ、一切仕事中に電話をかけてこないように厳しく言ってあるので何事かと思ったが、内容は豊国神社裏にシマノジコが出たと、鳥友から連絡の伝言であった。鳥だけはかけても良いことになっている。
シマノジコは大阪城公園では当然初記録の種である。ひょっとしたら大阪府でも初記録になるかもしれない貴重な記録である。そういえば23日の日曜日に連絡を受け、神社裏で1時間ほど待ったが出てこない奴がいた。直後にマイクロバスが通ったため「チッ・チッ」と地鳴きしていた奴は南外堀を超えて城南地区へ飛び去ったと考えた。しかし飼鳥のカゴ抜けだろうとの判断もあったことと、迎えに行く約束をしていた孫の顔が脳裏に浮かび、早めに大阪城公園を後にしたのだ。まさかあれがシマノジコだったとは。ちょっと後悔の気持ちである。

今頃シマノジコを楽しんでいるだろう鳥友たちの姿を思うと気もそぞろで仕事が手につかない。しかし、今日は締め切りの迫った仕事もあって定時に出るのは難しい。無理に帰ったとしても日没で暗くなるまでに現場で30分程度しか時間がとれないだろう。177で明日の天気予報を確認すると雨は大丈夫だ。そこで一生後悔することになるかもしれないが一つの判断をした。今日は諦めて明日に賭ける。だめだったら運がなかったのだ。一週間ほど泣いて諦めるだけの事さ。人生にはそのような悲しい試練もあるのだ。などと、早くも空振りになった時の自分を慰めているなさけない性格。明日の休暇に備えて急いで仕事の手順を整える。
5月26日興奮気味で深夜2時ごろから目が覚めて眠れない。明るくなるのを待ち兼ねて出かけ5時前に豊国神社裏に着く。薄暗い植え込みの中を透かして見ながらゆっくり歩いていいると向こうからやってくる蔵重夫妻が目に入る。たしか家は吹田市だから私より早く出ているはずだ。昨夜早く就寝したのなら別だが、睡眠時間は私と変わらず2〜3時間ではないだろうか。あいさつを交わしてそれぞれの場所を探していると神社裏の西側の方から見つけたと手招きがある。その瞬間良かったと熱いものが込み上げる。一生後悔しないで済んだ。ありがとう。蔵重さんよく見つけてくれた。

その後次々と鳥に取り憑かれた人たちがやって来て、おもい思いに写真を撮ったりスコープで観察したりしていた。定年を迎えた人もいたが現役の人も多く、誰かの口から仕事を休んでこんなことをしている奴は出世しないだろうな、の言葉に苦笑ともつかない笑いがおこる。ライフリストが200を越えて一人前、300を越えると、仕事か家庭に影響が出ると言われる。夢々うかつに鳥見には手を出さないことだ。ただ本誌の読者は既に鳥見人なので手遅れ、又は覚悟の上でのことだろう。なお、蔵重夫妻の名誉の為に言っておくが、ご主人は仕事に間に合うように大阪城公園を後にされた。ほかに午前中だけの休暇で昼前に後ろ髪引かれる思いで会社に向かった人もいた。一日休んだ人もいたがすべて名前は伏せておく。
しかし2枚の名刺を持ち、充実した日々を生き、会社人間とは一味違う人生を過ごしている魅力的な人達ばかりであった。
野鳥を見ていると自然が見える。そして世界が見える。哲学的だが宇宙が見え、自分の人生が見えて生き方が変わる。定年を向かえてから人生を見つめても遅い。
36号掲載の巻頭言より(1999年6月)

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