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73回タイトル

オジロビタキ舞う大阪城公園

いつものように早朝の公園を歩き回っていました。桜門から博物館の裏を通り抜けると「チィチィチィ」かすかな声が聞こえたので、誘われるように声のするアキニレの辺りへ向かうとヒガラが単独で採餌しています。ほんの数メートル先で、実の重さに低く垂れ下がっているアキニレの枝先をせわしく動き回って採餌するかわいい動きが肉眼でよく観察できます。
公園内の記録は写真による記録も併せて続けていますが、ヒガラは未撮影の種で、機会を待ち続けていたので、その瞬間はやった! という思いと同時に、カメラを取りに戻ってもヒガラはここにいる鳥じゃないと悩みました。万に一つの運にかけて取りに戻るか、諦めて今日一日ヒガラに付き合い行動圏を把握し次に期待するか、数秒間で答えを出して行動に移らなければ条件はますます悪くなる一瞬です。判断のため頭は全回転の状態。脳の中を電気パレスが駆け巡るのを感じます。しかも後に起こる重大な事態を知らずにいたのです。
その時すぐ横の枝からキビタキの雌イメージの鳥が貯水池方向に飛ぶのが見えました。この時期まで残っていたことは珍しいという思いが頭の片隅をかすめただけで、意識はヒガラの問題で一杯、飛び去った鳥を詳しく見ようとする思いは起こりません。
しかし頭を悩ませた答えは簡単に出ました。ヒガラが南の方向へ内堀を越えて一気に飛び去ったのです。行き先を探すのは難しいと思われます。葛藤から解放されたと同時に落胆もする不思議な感情です。心の緊張が解けたその瞬間頭に浮かんだのが、先に飛び去った鳥がキビタキではおかしいという直感です。なんとオジロビタキが浮かんだのです。5年ほど前に兵庫県で見たオジロビタキの印象が一気に蘇ったのです。まさしく第六感です。頭ではそんなことはないとはっきりしています。ともかく貯水池に駆けつけるとフェンスの有刺鉄線にとまる鳥がすぐに見つかりました。もちろん確認するポイントは黒い尾に白い班です。双眼鏡を眼にした後は気が動転して今もはっきり覚えていません。ただ走りました。ひたすら走りました。神は信じていないのですがこの時は戻ってくるまでいてくれと祈り続けてカメラを取りに戻りました。
本誌17号(1996年6月)で旭さんのオジロビタキが大阪城にやって来るという楽しい想像がありました、信じられないことですがこれが本当になったのです。これまで大阪府内で見られた記録は1度だけで、こんな珍鳥が自分のフィールドにしているところで見られたのですから驚きは想像を超えます。
誤解を恐れずに言うなら、これほど感動することは日々の中でそう多くありません。
20号掲載の巻頭言より(1997年1月)

上記のオジロビタキについて、イギリスのイアン・ドースン氏(英国王立鳥類保護協会[RSPB]のLibrarian)とフィンランドのハンス・ヤニス氏(フィンランドのアルラ[Alula]誌に、オジロビタキの研究論文を発表)からヨーロッパ種(Ficedula. p. parva)であるとの返事があった旨、小林氏から連絡があったので紹介します。

今回のオジロビタキは、ヨーロッパ種であるとのコメントが、フィンランドのハンヌ・ヤニス氏と英国のイアン・ドースン氏から届きました。ヤニス氏は大雨覆及び三列風切の明らかな羽縁の淡色班により、ヨーロッパ種の第1回秋羽である。この時点での性別の判断は不可能である。ヨーロッパ種の理由として、1淡い下嘴 2黒みがかった茶色の上尾筒 3たいへん淡く、白っぽい下部の羽衣と胸及び喉がかすかにバフ色がかっているのは、秋から冬における本種のすり切れた羽衣の特徴。これに対してシベリア種は1下嘴は黒ずんでいる 2上尾筒は真っ黒 3胸にはグレーぽい灰色のバンドがある。
ドースン氏はヤニス氏とほぼ同様の理由でヨーロッパ種である。鳥類学者にとってはヨーロッパ種とシベリア種は別種と考えているとのことです。最後になりましたが、塩田氏からの種々のご指摘に関しては参考になり感謝いたしております。小林 滋

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